デザイナーベイビーが産まれる!? それは人類の進歩か、あるいは禁断の扉か

光る鑑賞フィッシュからデザイナーベイビーまで遺伝子操作は ...

まことしやかに噂されるデザイナーベイビー。
実はすでに2015年に中国において、ヒトの受精卵の遺伝子編集を行ったことが公になっています(プロテインアンドセルという雑誌に掲載)。

この実験は安定した結果が得られず、現実的な運用には多くの課題が残ったといいます。

しかし、これと同時に倫理的な問題も多く指摘され、今もなおこの課題は議論中であります。

 

デザイナーベイビーは問題がないのか?
技術的に本当に可能なのか?
この技術が実際に使われる未来が訪れるのか?

それらを考えていきたいと思います

 

 

目次

 

 

 

デザイナーベイビーとは!? それは新時代の扉か、悪魔の技術なのか!?

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デザイナーベイビーとは、生まれる前に子供の容姿や能力をデザインしてしまうというもの。
厳密にいえば受精卵の時に遺伝子を編集して、特定の容姿や能力・特徴をもたせるというものです。

例えば、髪の毛の色を指定できたり、美男・美女にできたり、あるいはIQの高い子供として誕生させることができるのです。
他にも、高い身長になるようにしたり、特定の病気に罹りにくくしたり(特に遺伝性の病気の予防)、あるいは寒さや暑さに強い子供にすることができるのです。

 

重複しますが、以下にデザイナーベイビーに関してのメリットをまとめてみます。

【メリット】
✅親が満足感を得られる(親が望むような子がつくれる)
✅遺伝的な病気を予防できる
✅能力の高い人間が誕生する(知的にも肉体的にも)
✅能力の高い人間が増えることによってより社会が進歩する可能性がでてくる
✅犯罪者特有の遺伝子を排除することによって犯罪率も減らせる
✅容姿も選ぶことができる(例えば日本人同士のカップルからも金髪の子が生まれるなど)

 

このように、親にも子にもメリットがあるのは事実で、
特に競争社会であればあるほど、こういった優生的な特徴を持つ子を望む親は多くいるかもしれません。

※ちなみに米国では2013年に遺伝子予測(どの遺伝子がどういった特徴をうみだすか)の特許がとられています。
日本経済新聞

 

 

問題点

親が望む特性を子に与える「デザイナーベビー」も…ゲノム編集 ...

このようにメリットだけを見れば素晴らしい技術ですが、実用化に至らないのにはもちろん理由があります。

まず何より頭に浮かぶのが、倫理的な問題でしょう。

 

子供が本来持って生まれる特性・特徴を編集して生まれる、ということは、
子供がもともと持って生まれるはずだったものを失うということでもあります。
有神論者から言わせれば、神に対する挑戦、ともいえるでしょう。
つまり宗教的な問題です。

 

また、まだ技術的に不安定なところが多々あるため、人体実験であるという批判も非常に多いのです。
不安定ということは、上手くいけば親の望む能力を持った子が生まれるのですが、
反対に全く望まない子が生まれる可能性もあります(ゲノムエラー)。
そうなったときは親も子も悲劇です。
自然出産であっても、障害を持つ子が生まれることはありますが、
デザイナーベイビーの場合は親が明らかに有能な子を求めて恣意的に行うことなので、落胆も大きいでしょうしその後の子育てにも問題が残りそうです。

 

遺伝子編集の際、ゲノム編集や遺伝子組み換えのようなことを行うので(クリスパーキャス9という技術など)、場合によっては誕生後に何らかの問題が発生する可能性も否定できず、また問題がのちの子孫の代になって表面化する可能性もあります。

 

また、デザイナーベイビーのビジネス化という問題もあります。
というかこれは避けられないものかもしれません。
優秀な子供を誕生させるためには、多くの資金が必要になるのであれば、貧富の差がそのまま能力の差となり、より強固な貧富の差が生まれてしまいます。
生まれで能力や容姿のレベルが決まってしまう社会・・・それを考えるだけでも怖い気がします。
国や地域の格差も生まれるてくるかもしれません。
さらに、そうなればこれらを基にした詐欺事件や犯罪が増える可能性も見えてきます。
法律の整備が行われていないというもの事実です。

 

このように、倫理的にも社会的にも問題は多々あるのが事実のようです。
これらを乗り越えて、デザイナーベイビーは誕生するのでしょうか?
また、デザイナーベイビーとして生まれた(超優秀な)人が世界を統治していくのでしょうか??

 

 

 

世界初の遺伝子編集ベイビー

29点のデザイナーベビーイラスト素材 - Getty Images

中国の南方科技大学の元准教授、フー・ジェンクイ氏(賀建奎)は2018年に、遺伝子編集した体外受精IVF)胚を母親の子宮に戻し、双子の女の子を誕生させたという発表をしています。
その後、もう一人誕生させたとしていますが、この発表により、

中国国内をはじめ世界各国から猛烈な批判が寄せられました。

 

フー元准教授は「HIVに耐性を持つ子を誕生させたかった」と語っていましたが、
結局、2019年に中国の裁判所より有罪判決が言い渡され、フー元准教授と関係医者は、当局の監視下に置かれ数か月の自宅軟禁と、約2年の懲役を受けました(現在は釈放済み)。

フー氏が書いたとされるこの「実験」の論文は未公表でしたが、
MITテクノロジーレビュー(マサチューセッツ大学が所有するメディア)がこの論文を手に入れたとしています。
フー氏の論文に目を通した専門家たちは「科学的にも、技術的にも、そして倫理的にも大きな問題が多数ある」と語ったそうです。

 

しかし、世界の流れとして知っておかねばならないのは、
この研究を奨励していた企業や研究者も複数いた、ということです。

例えば、実験に関与したライス大学のマイケル・ディーム元教授や、
この技術の商用化を狙っていたとされるニューヨークの体外受精クリニック経営者であるジョン・チャン医師らなどの支援者がいたことも明らかになっています。

間違いなく、この技術をビジネスにしようと考えている人、企業は存在するのです。

あとは私たちがこの技術や思想を受け入れるか、
あるいは拒否するか、ということになってきます。

 

 

さいごに

クリスパーキャス9のような遺伝子編集の技術が、我々にとって、あるいは人類の未来にとって必要なものかどうかは多くの議論が必要のようです。

確かに現状では技術的にも不安定であり、倫理的な問題も解決しているとは言えません。

とはいえ、先天的な(遺伝的な)病気を予防できたり、能力を底上げできるというのは誰にとっても魅力的なのは間違いがないでしょう。
しかし、もし実際に使用するとなれば、貧富の差なども含めて解決しなければならない問題が山積みなのも間違いないでしょう。

もし、倫理的な面を無視して推し進めれば、実質的に金持ちだけ、支配者層だけが利用できる技術となります。

 

この問題を考えるにあたり、クリスパーキャス9という技術を開発した一人であるカリフォルニア大学のジェニファー・ダウドナ教授の言葉を問題提起の言葉として締めくくりたいと思います。

「禁止ではなく対話を続けていくことが重要です。なぜなら、禁止しても人々のデザイナーベイビーへの関心が薄れることはないのですから」